おもいださるるひとゆゑに… 14.0×9.5
還暦を過ぎるまで生きてきて、幾人もの身近な人の死に立ち会うことになってしまいました。
果敢に病と戦い、死の直前まで教壇に立ち、本を書き、
あたりの空気がキラキラ輝いて見えると言っていた友、
きらがまかれた高野切の美しい料紙を見ると、
友には世界がこんな風に見えていたのだろうかと想像します。
小学生の娘を残して逝ってしまった友は、
死のひと月前に最後の力をふりしぼり美容院に行って
髪を整えてから写真館で写真を撮り、
遺影にするようことづけて旅立ちました。
最後の最後まで強い母親でした。
煙草をプカプカ吸いながら、
「あたしの肺はきれいなのよ」と言っていた姑は、
83歳の時に肺に癌が見つかり、
3カ月の闘病の末亡くなりました。
「人間には寿命というものがあるんだよ。いくら節制したって寿命がくればおしまい。」
と生前言っていたけれど、
自らの死にあらがうことなく、癌の痛みに静かに耐えて、
鮮やかな引き際をみせてくれました。
思えばみんな癌による死です。
私の母も胃癌でした。亡くなってからもうすぐ1年になります。
天国へ行くにはいくつもの関門があるそうですが、
無事にたどりついているのだろうかと心配になります。